北方水滸伝の軍師「呉用」は、完璧主義だから任せられない。それがダメと盧俊義のツッコミ

本来の水滸伝に出てくる軍師の呉用(ごよう)は、知力に優れるも少し抜けているところもある人物。しかし、北方水滸伝の呉用は違います。リーダーとして立つには小粒。あいつがリーダーなら、誰もついて行かないと敵にも言われる欠点の多い男。

では、北方水滸伝の有能なる軍師「呉用」に欠けているところは何でしょうか。今回は、梁山泊第三のリーダー。盧俊義(ろしゅんぎ)の指摘から、彼の欠点・嫌われるところを見ていきましょう。

北方水滸伝の呉用は、完璧主義&任せられないダメなリーダー

呉用は、軍師として戦争の作戦を立てるだけでなく、政治や外交をも司っています。豊臣秀吉の部下だった石田三成と黒田官兵衛の両方を一人でこなしているようなものです。石田三成も、武将達には嫌われていましたね。

細かいルールをあーだこーだと注意する文官は、武将達には、嫌がられるもの。それを加味しても呉用は・・・北方先生。酷ですと言いたくなるほど、ひどい目に合います。

水滸伝の頭領。晁蓋(ちょうがい)も宋江(そうこう)も、「戦場の死に心を動かすな」と言います。戦場で、部下や兵士の死に動揺すれば、作戦にも影響を与えてしまい、被害が増えます。それを指摘する言葉なんですが、呉用は、これをできません。

心は動く。動くからこそ、平気な振りをしてきたのが呉用。彼が取り乱したのは、弟のように育てていた阮小五が亡くなった時だけ。それ以外は、人が死んでも次の作戦を考え実行する。その姿を見た男たちから、冷たい男だと評価されてしまいました。

そんな呉用を盧俊義が叱ります。

中国の帝国「宋」に反乱を起こしている梁山泊。最初は、優勢に進むも。ついに、国が本気になりました。禁軍(近衛軍)を投入して、全戦線で梁山泊を攻め立てます。

いまいち、肚を据えきれない呉用に対して、盧俊義が忠告します。北方謙三:水滸伝第15巻 折戟の章

盧俊義:「おまえには、どこか弱さがある。やさしさと言ってもいいだろうが、そんなものは闘いでは役に立たない。かえって邪魔であろう。おまえは冷たくなりきれないから、逆にみんなに冷たいと言われるのだ。」

呉用:「私はできるかぎりのことをやってきたつもりです。」

水滸伝第15巻

呉用の気持ちもわかります。誰よりも必死に働いてきた呉用。憎まれ役も引き受け、すべてを託したリーダーだった晁蓋にも死なれました。それでも、彼は、寝る間を惜しんで頑張りました。

今、リーダーを努めている方も、この呉用の気持ちがわかる方は多いのではないでしょうか。誰よりも自分が必死にやっていた。そうしなければ、競争に勝ち残れないから。だから、部下にも厳しくあたった。優しくすれば、彼らのためにならない。そう思って、頑張っているのに、周りは認めてくれない。部下は従ってくれない。

そんな方は、一度、立ち止まってみてください。なぜ、うまく行かないのか。それは、あなたの必死さや余裕のなさが、部下の自由を奪っているのかもしれません。

盧俊義:「すべてを最上に整えようという気持ちはやさしさにほかならない。もっと下の者に任せろ。おまえは梁山泊の向かう方向だけを見ていればいい。」

呉用:わたしに何もするなと言われるのですね。

盧俊義:今度の戦は、宣賛(せんさん)に任せたのだ。~任せたら、あとは落ち着いて全部を見ていればいい。そうするか宋江殿のようにただ祈るかだ。

呉用:わたしは全部を見ているつもりです。

盧俊義:そして、どこかが負けるのではないかと怯えている。それだけで、おまえは落ち着いているとはいえないのだ。

やさしさは、闘いに必要ない。せつないですね。レイモンド・チャンドラーも優しくなければ生きる資格がないと言っていますから、やさしさは必要ですよ。盧俊義殿。

それはさておき、ここから、リーダーとして必要なことを学べます。


リーダーの完璧主義は嫌われる

まず、すべてを最上に整えたいというのは、完璧主義にほかなりません。何事も度を過ぎては害になります。自分に完璧を求めるのは、まだしも、部下や他人に完璧を求めてもうまくいくはずがないんです。なぜなら、自分と他人は違うから。違う以上、自分の思うように人を動かすことは不可能。つまり、完璧主義は、無理な話。

そして、少しの違いも認めない完璧主義の上司の元では、部下は育ちません。

何を言ってもやっても文句言われる。結局、あの人は、自分のやりたいようにしかやらないんだよ。と言われる方は、完璧主義や他者を認めない心理状態にあるかもしれませんよ。

リーダーは、任せたら細かいことは気にせず、見ているだけ

さらに、任せる。任せたなら、見ているだけでいい。野球界の名将「落合博満氏」。彼は、三冠王を取った名打者。しかし、大谷翔平のような例外を除き、名打者兼名投手はいません。

そこで、投手については、森繁和コーチに一任しました。一任した以上、細かいことに口出ししないのが、部下のちからを引き出す最大のポイントです。

もちろん、任せると放任は違います。この塩梅をマスターしなければ、良いリーダーとはいえませんね。ただ、この二点を意識するだけで、あなたのリーダーとしての能力は、飛躍的にアップするはず。

北方水滸伝に出てくる呉用もこの2つの欠点を克服するのに、壮絶な体験をしました。あなたは、そんな体験をする必要はありません(笑)

物語を読むことで、そういった体験を追体験し、自分の人生に活かしましょう!

 

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