ノーベル賞受賞者のライナス・ポーリング博士が主張したビタミンC大量摂取という間違いの道
ノーベル賞受賞者をはじめ偉い人・賢い人のすべてが正しいとは限りません。ときには、彼らも間違った主張をすることもしばしば。ところが、その間違った主張を「ノーベル賞受賞者だから」正しいに決まっていると主張する人や団体がいます。
そんなノーベル賞受賞者の一人に、ビタミンCで有名なライナス・ポーリング博士という人がおり、彼の事を紹介しておきます。
ライナス・ポーリング博士の偉大な業績と間違いの道
サプリメント・ビタミン業界は、マーケティングで言うハロー効果で、ポーリング博士の主張を利用しています。そして、なんと、宗教やスピリチュアル業界も、彼の主張を利用しているのですから驚きです。化学者だったはずなのに、なぜと思いますよね。その答えは、後ほど。
まずは、彼の業績から。
ライナス・ポーリング博士は、ノーベル化学賞と平和賞を受賞した偉大な科学者。
ポーリングは20世紀における最も重要な化学者の一人として広く認められている。量子力学を化学に応用した先駆者であり[注釈 1]、化学結合の本性を記述した業績により1954年にノーベル化学賞を受賞した。また、結晶構造決定やタンパク質構造決定に重要な業績を残し、分子生物学の草分けの一人とも考えられている。ワトソンとクリックが1953年にDNAの生体内構造である「二重らせん構造」を発表する前に、ポーリングはほぼそれに近い「三重らせん構造」を提唱していた。多方面に渡る研究者としても有名で、無機化学、有機化学、金属学、免疫学、麻酔学、心理学、弁論術、放射性崩壊、核戦争のもたらす影響などの分野でも多大な貢献があった。
1962年、地上核実験に対する反対運動の業績によりノーベル平和賞を受賞した。ノーベル賞を2度受賞した4人の1人。初めてのキュリー夫人 に次いで2人目。化学賞と平和賞という全く異なる分野に及ぶ唯一の受賞者。wiki:ライナス・ポーリング
一方、ビタミンCの大量接種に伴う健康法を提唱。ビタミン&サプリメント業界の祖となるとともに、ビタミンCさえ取ればOKという俗説のきっかけになるなど弊害も作り上げた人物。
後年、大量のビタミンCや他の栄養素を摂取する健康法を提唱し、更にこの着想を一般化させて分子矯正医学を提唱、それを中心とした数冊の本を著してこれらの概念、分析、研究、及び洞察を一般社会に紹介した。ただし、これにより「ビタミンCを摂取すれば風邪が治る」という俗説が広まる切っ掛けともなった。wiki
ライナス・ポーリング博士の間違い
- 1953年:DNAが、三重らせん構造と発表。その後、二重らせん構造をワトソン&クリックが提唱。
- ビタミン療法を大々的に宣伝:間違いを指摘する研究を無視
- 1970年:ビタミンCとかぜを出版。3000mgのビタミンC摂取を呼びかけ
- 1971年:ビタミンCの大量摂取で、米国のがん発生率を10%減らせると主張
- 米国人の平均寿命が100年、150年伸びると主張
- 部下のアーサー・ロビンソン氏が、大量のビタミンC服用が、がんリスクを高めるとの実験結果を告げる。ポーリング博士は、ロビンソン氏の辞職を迫る
発禁図書
ライナス・ポーリング
「がんとビタミンC」
「ポーリング博士のビタミンC健康法」入手困難品で販売はできません。
内容の解説をさせていただきました。 pic.twitter.com/j8TwzVGVQ3— mansfield (@mansfield0904) January 7, 2022
もちろん、ポーリング博士の業績を否定したいわけではありません。特定の分野の専門家が、すべての分野に詳しいわけではないというのが、最も言いたいことです。あのニュートンもこんな主張をしているわけですからね。
どれだけ賢くてすごい実績がある人であれ、重要な意志決定に関して専門的に勉強してない人の意見だけで判断しない方がいいよって常々思ってたんですけど、人類史上最強クラスの科学者ニュートンはペストを治すためにヒキガエルの吐瀉物を飲むべきと考えてたとか良い例である。https://t.co/xoiW8yXCMC — 西内啓 Hiromu Nishiuchi (@philomyu) July 1, 2020
ポーリング博士が、人類に貢献したのは確かです。しかし、人の意見を聞かない・批判されるとキレるという典型的なダメ上司。特に、名声を得てからの彼は、自分の主張は、全部正しい的な面が強くなり、ビタミンCの大量摂取に傾倒してしまうことで、晩節を汚してしまいました。
1.いいものは多すぎても問題にならない
2.ビタミンなどの栄養素は、自然なものも人工的なものも違いはないと考えていた
ライナス・ポーリング博士の人間性についての意見・批判
ライナス・ポーリングは、人のためになる活動は好きだが、人をあまり大切にしない典型的な人物だ。とポーリングの伝記を手掛けたテッド・ゲーツェルとベン・ゲーツェルは書いている。「彼には、親しい友人はほとんどいなかった。政治的には、彼は自らが信ずる真実に向かって、行動する活動家であり、他人の意見などは歯牙にもかけなかった。」
虚栄心。ポーリングは、自分が間違っているかもしれないなどとは絶対に認めなかった。禍いの科学
ライナス・ポーリング博士&小牧久時博士:絶対平和の4原則
自らが信ずる真実に向かう活動家との意見。それが、明らかなのは、小牧久時博士との「絶対平和の4原則」を提唱したこと。
これが、また、凄い。化学者なのに、ちょっと違う分野でとんでもない主張をしており、同じく有名な博士である小牧氏とともに、国際地球環境大学院を創設。
これは、ライナス・ポーリング博士(2度のノーベル賞受賞)と小牧久時博士の共同作業。言っていることには、正しいというか正義の面も大きいのですけど。第三段階や第四段階になると壮大すぎ。フィクションによくある設定。特に、第四段階に至っては、すごく宗教の匂いを感じます。
第1段階:人間と人間の間の平和
世界各国の軍備の撤廃=湯川秀樹博士ご夫妻の提唱の「世界連邦の実現」(2010年まで に)第2段階:人間と動物の間の平和
肉食と動物実験と殺虫剤の科学的段階全廃 (2050年までに)第3段階:動物と動物の間の平和
野生動物、魚類、昆虫類の個体数の制御により、相互殺戮を根絶 (2090年までに)第4段階:この地球のみならず、全次元の全宇宙のすべての知的霊的存在の円滑・迅速なる完全救済。
小牧久時博士は、ポーリング博士とともに、地球環境大学院を創設したのですけど・・・
小牧は1926年生まれですからポーリングと共に地球環境大学院を創立したのは63歳の時になります。小牧の経歴を紹介したいのですが、主にここから組み立ててみます。非常に弱った事にwikiopediaにも記載がないからです。小牧久時博士の研究
この方は、小牧博士と国際地球環境大学について、かなり詳細に調べています。小牧博士とその活動を知りたい場合、ぜひお読みください。そして、国際地球環境大学も、なかなかのものだと思います。
いくら、ノーベル賞を受賞したような偉大な人物でも間違う時は、あります。間違ってもいいのです。問題は、間違いを認められないこと。
NHK大河ドラマ「真田丸」でも、石田三成が、真田信繁に言います。「私はほとんど間違えることはない。しかし、たまには間違えることもある。そのときは遠慮のう教えてくれ」
しかし、ポーリング博士は。部下のアーサー・ロビンソン氏の実験結果を潰してしまいます。大量のビタミンCを摂取しているポーリング夫妻を心配して、実験結果を告げたロビンソン氏に対して、辞職を通告するのですからひどい話ですね。
そして、私は、有名なのだから、研究所の研究を支配する権限があると主張。これは、最低のマネジメント。
ノーベル賞受賞などの権威を利用したハロー効果
さて、最後に一つ。ハロー効果を。ノーベル賞受賞やモンド・セレクションを旗印にセールスやマーケティングを行うのはよくあること。
マーケティングやマネジメント上で当たり前の「ハロー効果」。様々な賞や有名人を使って、相手に「すごい!」と思わせること。
いわゆる「後光が差す」という現象のことで、「NASAが開発した……」「全米ナンバーワン……」といったキャッチコピーで実力以上にすごそうに見えたり、芸能人がCMに出演することで(実際にはその商品は使っていないにも関わらず)ポジティブなイメージを与えたりする。
こうしたある種の権威を利用することで購入意欲を刺激する。実際に効果も高い。ハロー効果
皆さんは、相手の主張を鵜呑みにするのではなく、過去の経験や知識に照らし合わせたり、きちんと調べることをおすすめいたします。