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黄信:勇猛で自信過剰な自惚れ屋、優れた同僚を認められない男。

北方謙三氏の水滸伝シリーズ。108星も英雄がいるだけに、かっこいい人・悪い人・愚直な人と様々な人が登場するとても面白い作品です。原典となる中国の古典。水滸伝とはだいぶ違う北方氏ならではの視点で描く新たな水滸伝。

なかでも、ほんと、登場人物が魅力的。そして、仕事や人生で出会う人に似ている人が必ずいるはず。物語からマネジメント・人間心理を学ぶなら、一番に、この水滸伝をおすすめします。

今回は、その中から、愚痴が多くて、上司にイマイチ評価されていない「黄信」さん。ダンダダン。

自己評価が高く、同僚を認められない男「黄信」

黄信は、俺はできる奴だと自己評価は高いのに、まわりの評価は、少し低め。そこそこできるのに、そこが欠点で、リーダーになれない男です。あなたの周りにも、こういう人が一人はいるはず。

鮑旭もどう考えても低すぎる。杜 興(と こう)など、ずっと下ではないか

黄信は、聚義庁(しゅうぎちょう)前にかけてある名札の序列に前から不満を漏らしていた。自分が低すぎると考えているのだろう。

水滸伝18巻乾坤の章


ここで、黄信は、同僚の鮑旭や杜興の序列が低いことを愚痴っているのですが、上官の呼延灼からは、黄信自身の不満だろうと見透かされているのがせつない。現実でもいますよね。同僚に愚痴りながら。本当は、自分自身を評価してもらいたいという気持ちがだだ漏れの人。

鮑旭は、愚直が売りの人物。そして、彼自身は、偉くなりたいわけでも指揮官になりたいわけでもありません。ただ、愚直に戦い、任務をこなす男。黄信とは、正反対の性格といえるでしょう。

そういうところが、一軍の将として足りないと評価されていることに気づいていない。新たに加わった同僚に、愚痴っているのも、しっかりと上官の呼延灼に聞かれてしまいます。

黄信は、呼延灼のことは、同じ官軍出身で評価しているのですけどね。呼延灼からすれば、こういう愚痴を新参の同僚にこぼす部下は、ちょっと信頼に欠けると思うはず。なぜなら、実力以上に自己評価が高すぎる上に、同僚を認めないのは、組織運営上、問題になりがち。

まあ、黄信を上官にすれば、部下はたまったものではありません。

  • 部下の実力を正当に評価できない
  • 所属する組織や上官への不満から命令・指示に従わない
  • 嫌いな同僚や嫌いな上官からの指示に従わない
  • 功名心から独断専行する可能性がある

ざっと考えてみてもこのようなリスクあり。これでは、組織運営上、問題が生じて当たり前ですよね。

北京大名府攻略の任務

怪我をしていた時、戦力不足からけが人を集めた部隊で、街を落とす任務の時も、隊長らしくない発言で、同僚の単廷珪(ぜん ていけい)にたしなめられています。

黄信「俺たちがやっているのは戦であって戦ではない。」

単 廷珪「じゃ、どうしろと言うんだよ。」

黄信「それもわからん。ただ吠え続けているだけだ。俺は情けなくなってきた。」

単 廷珪「みんなそうさ。隊長が言うなよ。戦えないことが悔しくて、みんな泣きそうな顔をしている」

水滸伝15巻折戟の章

これでは、一軍を任せて、部下の士気をあげるのは難しそうです。とはいえ、この時の戦いでは、敵将「審亮」と一騎打ちを行い、首を取るという武勲を上げて、無理やり怪我をなおしてしまいます。ここは、黄信一番の見せ場。

そして、童貫との決戦において、うぬぼれたまま、敵の騎馬隊を追いかけてしまい、孤立し討たれるという最後。

「個人としては勇猛なれど、一軍を率いる器にあらず」。

水滸伝全体を通しての彼の評価は、こんなところでしょうか。現代の社会人ならば、一人の営業マンとしては優秀なるも、部下の力を引き出したり、いくつかの部隊をまとめてプロジェクトを成功に導くのは苦手というところでしょうか。

特に、大企業・役職などの権威に弱く、叩き上げや途中入社の人材に対して、差別をするタイプ。うん、よく居ますね。こういう人。

本隊将校。1077年生まれ。身長 – 170cm、体重 – 65kg。
(水滸伝)元青州軍の将校。梁山泊の蜂起前から花栄の部下として反政府活動に従事。秦明の入山後に正式に参加して二竜山・双頭山の将校を務める。外見的な特徴は特に無く、喪門剣(そうもんけん)と名づけた長剣を得物にする。董万の奇襲を受けた際に再起不能の重傷を負ったが、数合わせに駆り出された北京大名府攻略戦における審亮との一騎討ちの最中に気力でこれを克服、本隊将校として復帰する。
騎馬隊の指揮は果敢で粘り強く優秀だが、席次や扱いに対しての愚痴や不平不満が多いのが欠点(その欠点ゆえに一軍の指揮が認められないと呼延灼は評した)。『水滸伝』本編では朱富や丁得孫に不満を漏らし、『楊令伝』では戴宗も愚痴を聞かされたと回想している。史進や楊令が一軍を率いていることに不満を感じていたが、後に楊令については実力を認めた。童貫との最終決戦で戦死。北方水滸伝の登場人物

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